印牧さんのこと

12月2日に印牧真一郎さんを偲ぶ会のコンサートが行われた。ずっと整理がつかないでいたのだ。今でも印牧さんが逝ったとは思えない。ちょっと旅に出ていて、春ともなれば「合唱団の風のコンサートで詩読みしてくれないか」とか連絡がきそうな気がしているから。去年の12月の印牧さんのエネルギーはそのくらい熱かった。いつも前に向かっていた。その時もう、癌だとわかっていたのだけどおくびにも出さなかった。印牧さんの指揮はとっても艶やかだった。繊細だった。キッパリしていた。妥協のないところ、正直なところ、理性的なところ、だから、ケンカみたく議論になった。でも、最終的には表現者として任せてくれた。一蓮托生。大好きな小熊秀雄の話になると本当に、少年のようだった。小熊秀雄を私に教えてくれたひとが2人いるのだけれど、今、「詩読み」を始めているのも、この2人の叱咤と、もっとやってみろという励ましと、ばか、駄目だの駄目出しとを感じ、これからも「喋りまくり」「馬上で芝居をつくること、先駆を承はること、前衛たること、勇気を現はすことにつきる」のだと思っている。

印牧さんの蒔いた種はきっと、様々なところで芽生えていると思えて、見事な死に様を忘れることができないもっきりやのひとりとひとりである。

前を向こう。

蹄鉄屋の歌  小熊秀雄

泣くな、
驚ろくな、
わが馬よ。
私は蹄鉄屋。
私はお前の蹄〔ひづめ〕から
生々しい煙をたてる、
私の仕事は残酷だらうか、
若い馬よ。
少年よ、
私はお前の爪に
真赤にやけた鉄の靴をはかせよう。
そしてわたしは働き歌をうたひながら、
——辛抱しておくれ、
すぐその鉄は冷えて
お前の足のものになるだらう、
お前の爪の鎧になるだらう、
お前はもうどんな茨の上でも
石ころ路でも
どんどんと駈け回れるだらうと——、
私はお前を慰めながら
トッテンカンと蹄鉄うち。
あゝ、わが馬よ、
友達よ、
私の歌をよつく耳傾けてきいてくれ。
私の歌はぞんざいだらう、
私の歌は甘くないだらう、
お前の苦痛に答へるために、
私の歌は
苦しみの歌だ。
焼けた蹄鉄を
お前の生きた爪に
当てがつた瞬間の煙のやうにも、
私の歌は
灰色に立ちあがる歌だ。
強くなつてくれよ、
私の友よ、
青年よ、
私の赤い燄〔ほのほ〕を
君の四つ足は受取れ、
そして君は、けはしい岩山を
その強い足をもつて砕いてのぼれ、
トッテンカンの蹄鉄うち、
うたれるもの、うつもの、
お前と私とは兄弟だ、
共に同じ現実の苦しみにある。

「蹄鉄屋の詩」。印牧さんが学生時代、高円寺の古本屋で見つけた小熊秀雄の詩集から大好きだった詩。なんでも電車の中で林光さんを見つけ、この詩に曲をつけてくださいと一気にお願いしたらしい。

紹介 管理人

劇団もっきりや。ひとりとひとり

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