11.16 長長忌 ──トクタラトクタラ、トクタラ 

11月16日である。小熊秀雄を偲んで、小熊秀雄協会主催の『長長忌』が開催された。早稲田奉仕園リバティホール……小熊らしい名の響きのよい会場だ。

司会の宮川達二さんの開会挨拶から、『長長秋夜』の世界を金うねさん、詩人の佐川亜紀さん、劇作家の小関直人さん、小熊秀雄協会主催で詩人の佐相憲一さんで、座談会。金うねさんの『長長秋夜』を朗読が、心に響いてくる。自然で、リアルなその声から「長長秋夜」の世界観、風景が見えてくるようだった。佐相さんが小熊のもつ言葉のリズムについて語られる。また、佐川亜紀さんが、砧の音(川での洗濯の時、また女たちが夜なべして、布に光沢をもたせたり伸ばしたりするアイロンをかけるような労働)をトクタラトクタラとした小熊独自の擬音について話される。韓国の翻訳では、そこは違うように訳されているそうだ。小熊は、日本が植民地にした朝鮮に対して、また若者と老人、都市と田舎、虐げられている女性たちについて言葉を紡ぎだした。共感と同時代の人として、真っ向からむかっていたように思う。

────

汚された白衣を
ざぶりと水にひたすと
河は瞬間くろい流れとなる
そしてやがて黒い一條の流れは
しだいに薄れて
河下に去つてゆく
老婆の憤りの表情も
しだいになごやかになつてゆく
トクタラ、トクタラ、トクタラと
洗濯台パンチヂリを陽気にうちだす
たがひに顔見合はせて
強くすべての出来事を肯定しようとして
いたいたしい微笑の顔にかはつてゆく
かよわい手をふりあげて
強く石をうつ
強く朝鮮の歌をうたひだす
黒くよごれた白衣をパンチでうつ
うつパンチも泣いてゐる
打たれる白衣も泣いてゐる、
うつ老婆ロツパも泣いてゐる
打たれる石も泣いてゐる
すべての朝鮮が泣いてゐる

(長長秋夜より抜粋)

この詩を書かれた時代について小関さんが、小林多喜二のことに触れて話してくれた。小熊は二度拘束されていると。私は、あっと声が出そうになった。確か、小林多喜二が拷問死を受けた後、29日間、小熊も拘束されている。小関さんは劇団銅鑼の舞台「池袋モンパルナス」の劇作家で、私も初演を見ている。その時期から少し後に、私は演劇工房で「土の中の馬賊の歌──小熊秀雄と今野大力」(作・演出木内稔)という舞台に立ち、小熊のパートナーの恒子役を演じた。その芝居のシーンのなかで、小林多喜二の死のことが舞台上で語られた。治安維持法……そういう時代だったのだ。旭川の同郷である、歯に衣を着せずいつも、小熊を叱咤激励していた詩人・今野大力も拷問によって深い傷を受け死んだ。その中で小熊は、『喋りまくれ』と詩を書き続けた。……そんなことを小関さんの話から思い、その後のもっきりやの『詩よみ』は、心がどくんどくんとしていた(小関さんには打ち上げで小林多喜二を何編も繰り返してた、へんな酔っ払いに思われたと思う、ごめんなさい)。

次は詩人柴田三吉さんの朗読。2019年小熊秀雄賞受賞の『旅の文法』の詩と小熊の遺稿「無題」「画帳」、そして大好きな「親と子の夜」……政治的なことは今日は話さないがと言われたが、彼のその詩の言葉に、今を生きていることの責任、人と人との生きた関係、そして過去から未来までが感じられた。心に響く詩は、その風景が見えてくる。抑えた声のなかからそれは、溢れてくる。

休憩が入り、緊張しながらも、はっちゃけていくもっきりや『詩よみ』、そして高橋織丸講談「小熊秀雄伝から サンチョ・クラブ」、しゃりばりカンカラの「池袋モンパルナス」が講談内で歌われた。

その後、来場の方々から、「しゃべり捲れ」!と、 小熊秀雄協会の方々の飛び入りの話が続いた。「シャリアピン」の詩、面白かった。本当に小熊らしい。

二次会で、小熊秀雄を愛する方々とたくさん話ができたこと、話がどんどん進んで、わくわくしてすごく愉快に酔っ払ってしまった。この酔っ払いは、小熊の詩でよく知らなかった詩の話を聞き、今度朗読してみたいと思っている(おそらく、「空の脱走者」)。

小熊秀雄の命日の11月。華やかに賑やかにそして、深く思い続けたい。

さて、演劇工房の芝居『土の中の馬賊の歌』はこう始まる……

恒子夫人

……人々が寝静まつた真夜中にどこからともなく土の中から唄が聞えてくる、がや/″\と大勢で話あつたり合唱したりそれは静かな賑やかな土の中の世界から洩れてくる陽気で華やかな馬賊の歌……

「土の中の馬賊」の木内さんへ

11月16日に先に行かれた木内さん。こんな時代になってしまいました。まさか、闇の中の薔薇を一心に見つめつづけるとは思いもよらなかった。憤り、ひるむな、立ち向かえ、面白いぞ芝居は……と微笑を浮かべもらえるでしょうか。呆れられるほど、私……「自由それは私自身」でいきます。

 

 

 

 

 

 

紹介 管理人

劇団もっきりや。ひとりとひとり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です