だだ だだ

「時間は、父にとって、無限に自分のものだったように見える。たった59年ぽっちの短い生涯ではあったけれど、実は、何百年、何千年、何万年という果てしない時間を、ちゃっかり私有していたのではないかと、私は密かに疑っているのである。」

これは娘さんのみみこさんの言葉。山之口貘である。大好きな詩人の一人。戦争中、こんな詩を書いて発表している。

「紙の上」

戦争が起き上がると
飛び立つ鳥のように

日の丸の翅をおしひろげそこから
みんなで飛び立った

一匹の詩人が紙の上にいて
群れ飛ぶ日の丸を見上げては

だだ だだ と叫んでいる

発育不全の短い足
へこんだ腹 持ち上がらないでっかい頭

さえずる兵器の群をながめては
だだ だだ と叫んでいる

だだ だだ と叫んでいるが
いつになったら「戦争」がいえるのか
不便な肉体 ともる思想
まるで沙漠にいるようだ

インクに渇いたのどをかきむしり
熱砂の上にすねかえる

その一匹の大きな舌足らず
だだ だだ と叫んでは

飛び立つ兵器の群をうちながめ
群れ飛ぶ日の丸を見あげては

だだ だだ と叫んでいる

だだ だだ とはなんでしょうか。

検閲があるなか、貘さんが書いている。今もまさにこんな時代の突入しようとしている。もっきりやの詩よみでも だだ だだ は登場するかも……しれない。

紹介 管理人

劇団もっきりや。ひとりとひとり

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